Step3.オークションに出品してみよう

古物商奮闘記・18

必ず売る能力

私には一つ憧れる姿がある。
それは恒常的な利益を生む能力者だ。

例えば、フォークリフトを開発した人なんか『これぞ天才!』と感嘆する。
会社にて、キビキビ働くこのマシーンをしげしげと見つめる。
技術開発で最高の到達点。その一つにフォークリフトがあると感じる。
これまであまり考えてこなかった『商売』というものを考える様になり、今さらながらこのマシーンの凄さに気付かされた。

どういう経緯で誕生したのかは分からないが、まず物を乗せるパレットが先に存在したのではないかと推測する。
パレットという台にまとめて物を置いたは良い。
だがそれを1ユニットとして、いかにそのまま安定させて運ぶのか?
省スペース、効率、コスパ、安定性。全てをクリアーした手段を考えなくてはならなかったのだろう。
手積みよりもスピーディーに。クレーン玉掛けよりも安全、そして機動的に。

そこで試作に試作を次いで誕生したのがフォークリフト。
パレットの下にフォークを通して垂直に持ち上げるというアイディア。
旋回半径を小さくして遠心力を極力抑える為に、ステアリングを後輪につなぐという発想。
どれを取っても、これ程完成された運搬技術は他に類を見ない。

商売の観点からも秀逸で、パレットという物の存在価値を永続的に確保した。
このセット構造を考案した人は、紛う事なき天才だと思う。

天才にも色々いる。
相対性理論のアインシュタイン。
打ってホームラン。投げて完封。エンジェルスの大谷翔平。
iPhoneをプラットホームにスマートフォン構想を世界に根付かせたスティーブジョブス。
32手先の局面まで予想しているという将棋の藤井聡太。

その他にも、今日我々が当たり前のように使っているコンピューター。
その電子回路やCPU等の技術を開発した人。
遠く宇宙の果て。およそ人間の力など無に等しいスケールの銀河系。
その全く次元を超越した場所にある星々の存在を突き止める天文学者。
又は全くの逆。ミクロの世界の病原菌に対抗し、ワクチンを作り出す疫学者。

現在の世の中は、『どうしてその域に達するのか全く理解できない天才』によって作られている。
私の様な凡人には訳が分からなくとも、天才達のおかげで便利な生活を有り難く享受し、大谷の活躍で美味い酒が呑めている。
藤井聡太に関しては、凄すぎて凡人にはもうワケが分からない。
メディアもその凄さを伝えるのを諦めて、休憩時の勝負メシの話題しかしない。
少し気の毒な天才だ。

全く新しい事を作り出したり発見したりする、いわゆるゼロから1を生み出す天才もいれば、1を10にも100にもする天才もいる。

海で拾った流木を売る様な人なんかはどうだ?
アレはメルカリだったっけ?
何というか…、アレも一種の天才よな。
どういう売り方をしたのか詳細は知らないが、それを買った人は近代アートの材料として使用したのだという。

しかし、まず流木をそのまま売ろうとするか?普通。
カテゴリ選びに工夫を凝らしたのだろうか?
この発想。はじめから芸術家相手に売れるとターゲットを絞っていた?
とすれば、その思考の切り口が尊敬に値する。

トイレットペーパーの芯やペットボトルのフタを袋いっぱいに集め、それを工作の材料として売ったという話もある。
夏休みの終わり辺りにバカ売れしたと聞いた。
言われてみれば納得するが、これも目の付け所が常人のそれとは違う。
思い付きそうでなかなか思い付かない。

一見、一銭の価値もなさそうな物でも、それに何かしらの利用法を考え、価値を見いだす能力。
そういった才能が、残念ながら私には無い気がする。

口先だけは上手いこと口上を並べた様に見えるが、結局は商品のスペックと本来の使用法しか追求できていない。

いや、これで良いんだと思うよ?
売れ易い物さえ仕入れることが出来たら、充分に商売ができる。

だが、違うんだよな。私が求めているモノは。
先に述べたような、通常では売れない物でも必ず売る能力。
それが欲しい。

まぁ、今の調子をしばらく続けてみよう。
自身の目標を見据えるならば、決して消極的になってはならない。
自身の目標とは何か?
それは、通常では売れない物を売る独自のセールス法を見いだす事。
その必勝パターンを見いだしさえすれば、売り上げなどは後から付いてくる。

実はいくらで競り落とされるかという所にはあまり興味が無い。
そこまで言うのならば、よっしゃ買ってやろうじゃないか!
そういう気っ風の良いお客が一人でもいれば私は満足だ。

今回めでたくも、トイドローンの買い手が一人付いた。
入札はたった一人であったが、きっと精一杯の口上がその人の心には届いたのだろう。
そう信じる。

ドローンを売ってみよう(改)以前、売る寸前になってやっぱや~めた!と、ジモティー出品を取り下げた商品。あの頃はまだ私も本気ではなかった。だが今日。一人の古物商とし、改めて口上を立て並べる。...


値は1円も競り上がらなかったが、売れたという経験が何よりも喜ばしい。
落札してくれた方よ。
ありがとう。良いスタートを経験させてもらいました。

そうだ。
フォークリフトの発明には遠く及ばないが、セット販売という手段で何か方法が思い付くかもしれない。
偶然にも、トイドローンも教本とのセットでの販売実績だ。

売る物にもよるが、テーマを少し捻れば思わぬ興味を引き寄せる可能性も充分にある。
開拓の余地はまだまだ有りそうだ。

それには、少々リサーチという事もしていかなければならないのかもな。
ちょっと名刺でも作って巷の声に耳を傾けてみるか。