Step3.オークションに出品してみよう

古物商奮闘記・17

安く仕入れて高く売る

私が住む神奈川県相模原市には、アメリカ合衆国との国境がある。
同じ神奈川県内には、他にも隣接する座間市に陣営基地としてキャンプ座間。
大和市と綾瀬市には厚木航空基地。そして横須賀市には海軍の軍港がある。

そういった環境柄で、我が家の近隣では昔からアメリカ人の往来がある。
娘の幼稚園のクラスにも何人かアメリカ人の子がいたりする。

だが不思議なことに、町並みは驚くほどアメリカに被れていない。
軍の敷地を境に生活様式はくっきりと区切られている。
フェンスから外。道を挟んで数メートル離れれば他の何処とも変わらない。
情景は日本そのものなのだ。
それが、相模原市。そして座間市の特色と言えば特色だろう。
日米、お互いに安息を脅かさない行儀の良さがある。

厚木市はもう少しアメリカが醸す横文字風情がこぼれ出していたりするのだろうか?
これまであまり興味を持ったことが無かったので、その点はよく知らない。
だが、ネットで調べてみてもあまり軍用品払い下げの店でヒットしなかった。
多分、ここら近辺とあまり雰囲気は変わらないのかもしれないな。

横須賀に関しては、歌にも映画にもなるほどアメリカ軍人が肩で風を切って練り歩いていたのは広く知られているところ。
どぶ板通りには、アメリカン雑貨の店もスカジャン屋に負けず多いと聞く。

一方、相模原市は別の勢力がある意味怖いところだったりするのだが、横須賀と比較すれば日米の友好関係が平静に保たれてきた街だと思う。
私が知らないだけなのかもしれないが。
横須賀や沖縄の様に、血気盛んな日米ヤンチャ対決というのはそうそう見ることが無い。

そういった土地柄もあって、マイタウン相模原では米軍払い下げの商品を軒に並べている店が見当たらない。
何処に行けばそういう店があるだろう?と、イメージとして思い浮かぶのがまず第一に横田基地周辺なのだ。

場所は多摩川を超えて東京になるが、国道16号線でのアクセスが良く、横須賀よりは何となく近い。
対して、横須賀も同じく16号線を反対側に行った果てに位置する。

それほど距離に違いは無いのだが、それでも何となく…横田の方が身近に感じる。
港というのがまた、若干、敷居が高いからなのかもしれないな。
相模原市民にとっての日々の生活は、海という環境にあまり馴染みが無い。
そう。相模原市はいまひとつドラマ性に乏しい。
哀しい哉、ブルースすら似合わない。

まぁ、そんな前置きはともかく。
思い付いたが吉日。私はこういう時、意外とフットワークが軽い。
早速ですが昨日。仕入れの心づもりをちょっとは抱き、バードさん(Googleの対話型AI)に奨められた横田基地周辺の店々に足を運んでみました。

これまで関わってこなかったアメリカという異文化に、個人的なワケを携え敢えて歩み寄る。
些か鼓動が高鳴った。

古物商奮闘記・16古物商として何を仕入れるの良いのか?私は少し悩んだ。AIならば何か良いアイディアを授けてくれるかもしれない。そう考えたのだが…。...

古物商としての冒険が今、ここからこの路線でスタートするんだ!
…と、そういう体で長々と書き始めてしまいましたが…。

結論として先に言っちゃうとね。この方面はダメだ。

まずね、仕入れという観点でダメ。
何がって、全体的に値段が高い!
そりゃそうだ。店主が長年築いてきたアメリカ軍とのコネクションが品揃えに現れている。
問屋も仲卸も存在しないから、どれも値付けが強気だ。
『私が揃えた!嫌なら他に行け』というの商人としての気概がどこの店にも垣間見える。

ある店のショーケースの奥に『湾岸戦争で使用された毒ガス検知器』とタグ付けされた物があった。
物珍しさでいっちょ買ってやろうか?値段も7800円でお手軽価格だし。とかちょっと考えたりもしたんだけど…。

そこに値付けのマジックが潜んでいる事に気付いてやめました。

希少品にしては安いという見方もあるが、安易に手を出すのはやめておいた。
身も蓋もない話だが実用面で見ると、ガス検知器ならば住宅用の物が安価で手に入る。
ホームセンターでも、家電量販店でも。

わざわざこれを欲しがる層と言えば、当然だが軍用品マニアのみに限られる。
だがそれをオークションに出したとして、ガス検知器に果たして7800円以上の金を出す収集家がたまたま現れるだろうか?

いや。やってみなければ分からないが、まぁどうせ現れまい。
物は試しでネタとしてやってみても良いが、木彫りの熊よりも勝負は難しいかもしれないな。
今一度冷静になってみよう。7800円は高い。

どの品を取ってみても、特段目を引く商品でないにも係わらず、『戦場』という特殊なユーズドバリューが乗せられ少々お値段が張る。
迷彩戦闘服やフライトジャケットにしても、一着で軽く2~3万はする。
仕入れ値としてお気軽に手を出せる価格ではない。

横田基地周辺で軍用品を扱う店は何店かありますが、そういった理由から古物ディーラーとしての関係構築は断念しました。

フォローとして付け加えておきますが、軍用品だけでなくオモチャや雑貨、その他にも珍しい物はたくさん売っていました。
何でも聞いてみれば店主も気さくに受け答えてくれます。
純粋に、古き良きアメリカが大好きな方は、一度足を運んでみてはいかがでしょうか?
もしかしたら最高の掘り出し物が見つかるかもしれません。

さて。冷静に手を引いたとこで。
一旦、古物商としての基本に立ち返ってみるのですが。

商売は何でもそうですが『安く仕入れて高く売る』。ソレが基本。
そうでなければ、古物商をやる意味なんてそもそも無い。
基本中の基本であり目的でもある。

では、どうすれば商品を安く仕入れる事が出来るのだろうか?

いよいよ、古物商の特権を使う時が来たのかもしれない。
それは『古物市場』への参加だ。

古物市場については、まだまだ事情がよく把握出来ていない部分も有ります。
もう少し調査してから参戦するとしましょう。
開催日時とか決まり事も所によって様々だと聞きますから。

しかしその前に、専門分野としてどういうジャンルを扱って行くのかをある程度は決めておいた方が良いのかもしれない。
ただ闇雲に何でもかんでもジャンル構わず仕入れていては、何がどのくらいの価値があるという古物商としての知識や勘が養われない様な気がします。

古物商。その中でも道具商として扱えるジャンルの幅は広い。
得意とするところの口八丁。その見せ所ではある。
これぞヤフオクの醍醐味と私は当初から睨んでいた。

そうだ。手法として、セラーの立場でなく『商品目線』で説明文を攻めてみようかな?
そんなファンタジックな切り口に、果たしてヤフオクバイヤーはどう反応するだろうか?

娘が観ているDVD『トイ・ストーリー』の映画を横目にそんな事を考えてみた日曜日の午後。

要らない物を売るだけなら割と簡単だけど、仕入れをするとなるとなかなか難しいものなんですね。
これまで商売なんてやった事がなかったから知らなかったです。