千本ノック ９球目 もしクレーンゲームの景品を売るならば
アンパンマンのぬいぐるみを売ります。
出品者：32歳男性（研究職）
出品額：1,000円～
口上スタイル：断捨離
アンパンマンのぬいぐるみは
この少子化の時代でも割と需要があります。
例えこんな偏屈な売り方でも一山いくらで捌けます。
【商品説明】
我が家にはアンパンマンが溢れている。
イオンモールに行く度、
子供にせがまれてついついクレーンゲームをしてしまう為だ。
アレにもコツというものがあって。
ぬいぐるみの重心を緻密に計算し、
弛まぬ経験を積むことで獲得率は日々向上してゆく。
私も最初はあのアームの握力を皆目信頼できなかったのだが、
信じられないことに上達の糸口というものは
何事に於いてもいつかは見えてくるものなのだ。
更には、アンパンマンの頭でっかちなあの形状は
移動中のバランス維持にちょうど良く、
ついつい損益率との兼ね合いでリスクヘッジの対象となる。
なので我が家は、
ジワジワとアンパンマン屋敷へと変容しつつあるのだ。
そろそろ何とかしなくてはならない段と相なった訳である。
子供の管理責任放棄対象となっている分、
誰かに引き取って戴けるならばありがたい。
（いよいよ子供がお片付けができない量になってきている）
お互いの交渉の末、取引が成立した時に受け渡し方法は改めて話し合おう。
さて。入札する貴方に確認したい事がこちらからもある。
アンパンマンの事をどう思っているのかを是非聞かせて戴きたい。
手にする前によく考えてもらおう。
果たしてそのアイデンティティーの在り方は、
本当に子供の教育に際し良しと言えるのモノなのだろうか？
つまりはこうだ。
アンパンマンとは果たして本当に正義の味方なのだろうか？
バイキンマンは本当に悪なのだろうか？
そこのところをよくよく考えてから
この諸々のグッズは購入してほしい。
そんな事まで深く考えたことも無いし、
これからも考えるつもりはない。
アンパンマンは無条件で正義の味方に変わりない。
と、斯様な考えをお持ちの方ならば、
感謝の言葉も何も一切のコメントはいらない。
どうあれ高値を付けてくれた方にお譲りするのは、
オークションというシステム上、お断りする事はない。
その点は決してやぶさかではないのだ。
が、再度言う。コメント無用。
購入費用と送料だけ振り込んで頂ければO.K.
きっと貴方とは気が合わないだろうから。
それにきっと私のコメントは貴方をイライラさせると思うから。
取引に関してはビジネスライクに徹する事にしよう。
よく私は理屈っぽいと言われる。妻からは毎日だ。
それは多少ではあるが、
そういう部分もあるとは私も自覚している。
だがどうしても納得いかない事というのは誰にでもあるだろう？
私は、アンパンマンの必殺技、
【アンパンチ】と【アンキック】を見る度に、
また暴力で解決か…と、それでめでたしめでたしなのかと。
格闘ゲームで言えば、
きっとコマンドなしのボタンひとつで出る通常アクション。
あんな単純な攻撃。ただの力技ではないか。
まるでパワーバランスの悪いVery Hardランクのラスボス凶悪攻撃。
きっと必殺ゲージの消費もなく発動しているに違いない。
一言で言えば【横暴】なのだ。
その点、バイキンマンは科学力を駆使して、
そんな反則アンパワーに挫けず何度も何度も這い上がる。
航空力学の常識を無視して空を飛ぶマシーンなど今後我々に作り得るだろうか？
そして我々現代人も未だ成し得ていない、
二足歩行型巨大ロボットさえいとも簡単に構築していた。
未知のプロトコルを駆使する彼は間違いなく天才と言える。
そして努力の人でもある。
いや、菌なのか？背中に羽が生えているから虫なのか？
それはまぁこの際どうでもいい。
我欲の赴くまま。その行動に於ける動機はどうあれ。
困難に決して屈しないあの姿こそ、
これからの苦しい時代を担う子供達に見習わせるべき姿なのではと、
かえすがえす思うのである。
見てくれは悪いが、
決して諦める事のないあのガッツ。不屈の魂。
令和を生きる我が子にも、
今もなお垣間見えるあの【昭和のド根性】をできれば教えたい。
私も父親に根性あるのみと叩き込まれたものだ。
…と、そうしたいのは山々ではあるのだが。
何故か娘はバイキンマンを好まない。
もっと言うと毛嫌いさえしている。
加えて、残念ながらバイキンマンはクレーンとの相性が悪い。
なのでどうしても、出品するのはアンパンマンがメインとなる。
私と同じくバイキンマンを応援する同志諸君には申し訳なく思う。
それはそれとして。我が娘ももう五歳。
そろそろアンパンマンは卒業してほしいものである。
だが安息の時はまだ遠い。
近い内に訪れるであろう、
【プリキュアは教育に良いのか悪いのか問題】も
今の内から考察しておかねばならないだろう。
娘も口が達者になればきっと論争に発展する。
課題はまだまだ続くな…。やれやれだ。
ここでアンパンマンに入札する謂わば同志よ。
子育ては斯くも忙しい。
心して掛かれよ。
なかなか居ませんよね。こんな気難しい人。
でも私自身のアンパンマン観を綴っているうちに
自然と売るスタイルは整いました。
買い手がつくかはギャンプルですけど。
