スピンオフ

夢の国土産を売ってみよう

千本ノック 15球目 ポップコーンバケット

ディズニーシーポップコーンバケットをお譲りします
出品者:22歳女性(OL)
出品額:2,000円

口上スタイル:たらい回し

ディズニーには大人の寂しさも包み込んでくれる包容力があります。

【商品説明】

私はいらないから。そう言いました。
売るからね!とも伝えました。

友人のY美は少し残念そうにしていたけれど、
この程度で諦めてはくれない子だという事はわかっています。

でも私は全くと言って良いほど興味が無いのです。
できればお土産は消え物だけにしてほしい。

さて、売るにしても私は高校の卒業イベント以来、
ディズニーシーはおろかランドにも足を踏み入れていません。
よくは分からないところどう売ればよい物やら。

どうやらコレはポップコーンの入れ物らしいのですが、
ディズニーシーのダッフィーというキャラクターのグッズらしいのです。
ええ、それはそれは甘いコーティングがされたポップコーンが入っていました。

背面のスイッチを入れると明かりが点くのです。
恐らくは…暗がりで楽しむんでしょうね。
お父さんが帰宅時、外から眺める幸せな家族の団らん風に。

いつもの様にY美がお土産にくれました。
けれど、いつもとは違うのは中身よりも
外側の入れ物の方が本体でありそうな物である事。

なぜ私に?子供がいるならばまだしも、
独身の私がコレを貰ってどうしろと?

あなたの周りには居ないでしょうか?
私の様な《興味のない人間》に、ディズニーの良さを啓蒙してくる人。

それとも…このページを開いているということは…、
あなた自身がそうであったりするのでしょうか?

Y美とは幼い頃からの友人であるのだけれど、
私からしてみると彼女はとても謎が多く、
まったく理解できない人種の一人と言えます。

年パスを買っていて、月2は必ずランドとシーにそれぞれ足を運ぶ。
…らしいのです。
一介の中小勤めのOLが、
何故、毎回毎回、週明け週明け、
自分だけでなく周りに振る舞う分ものグッズを購入することが出来るのだろうか?
ディズニーグッズって、一つ一つがとてもお高いんですよね?

その財力がありながら、なぜ相模原から浦安に引っ越さないのか?

そもそも、何故、夢の国とは何の関係もない企業に務め続けているのか?

そして一番謎なのは、
何故?そう何故私に対し、執拗にディズニーを推してくるのだろうか?

何故何故が多くて申し訳ありません。
でも謎の一つは、つい最近判明しました。

Y美はどうも、ディズニー界隈では、
ちょっと名の知れたインフルエンサーだという事らしいのです。
好きも常軌を逸すれば、メディアが放っておかないという事なのですね。

そこまで好きを押し通せる事がとても羨ましく思います。

甘いポップコーンを口に運びながら少し思い出に心を浸してみました。
私とY美はどうして変わらず友達のままでいられるのだろうと。
そもそも、私とY美とはいつから友達なのだろう?
Y美にとって、
それはこのキャラメルに浸ったポップコーンの様に甘い物であったのでしょうか?

記憶での一番始まりは…
Y美が関西から転校してきた小学校三年生の時でした。

そうだ。
そう言えば、一週間経っても友達が出来ないでいるのが寂しそうで、
見かねた私が声を掛けたのがきっかけだったっけ。

それから、関西訛りを恥ずかしそうにしながらだったけど、
次第に心を開くようになって、中学高校も一緒のところに進み…。

卒業した時には、二人で一緒にディズニーランドに行ったんだっけ。
そうね、二人で。

楽しかった…のかな?
春になりかけのまだ肌寒い頃だったけど、
シンデレラ城に照り映える無数の花火と
キラキラと連なるパレードを門限も忘れて眺めたっけ。

あれから月日は経って、私達は別々の道を歩み始めました。
お互いに良い人が見つかっては別れてみたり、
それぞれの人生に新たなドラマが始まり。
Y美はよく分からない内にディズニーに傾倒するようになり。

ソレはもしかしたら、寂しさを紛らわしていた行動だった様にも見えました。
今、改めて思えばですけれど。

少しはY美の話にも耳を傾けてみようかな?
今では、もしかしたら立場は逆転しているのかも知れません。
いや、そうに違いない。
色々あったと言い訳してみても、

孤独なのは結局ワタシ。

Y美はそんな私の心を見透かして心配しているのかも知れません。
お互い実家も出ず、未だ家が近所なので、
週明けには何かしら手土産を持って私の家に訪れます。

まとめて掴んだキャラメルポップコーンは少し塩っぱい味がしました。

しかしそれはそれ。
話は別。コレは売ります。

ネットで調べたんですが、ダッフィーには年々お友達が増えているようです。
つまりは今年限りの今しか手に入らないモデルになるみたいですね。
まぁそんなバリューなんて、ディズニー内では全てに当てはまる事なのでしょうが。
欲しくてたまらないコレクターの方などがいらっしゃったら、
どうぞ。お譲りいたします。
(ポップコーンはお付け出来ませんが、内部はしっかりと消毒してお渡しいたします。)

そのかわりと言ってはなんですが、
今度また久しぶりに、Y美をディズニーに誘ってみようかなと思います。

何と理由を付けて誘い掛けようか悩むところですが…。

先日、子供を連れて夢の国に行ってきました。
高校生が制服姿に身を包み、JK達がまさに青春を謳歌していました。
私もそんな青春を過ごしてみたかったです。